心因性疼痛編

全身を痛めていたのは、
「頑張りすぎ」が原因だった。

「体の全てが痛いんです」

「腰も背中も骨盤も痛くて…もう歩くのも車を乗り降りするのもしんどいんですよ」

初回のカウンセリングで打ち明けたのは、自分でもうんざりするような悩みだった。

痛みがひどい時には、神奈川県から隣の静岡県まで足を運んでまで腕のいい鍼灸院に通っていた。

それでも、一時は痛みが引いたかと思うとまたぶり返す日々。

「この痛みがなくなる日はこないのか」悩んでいた時に、友人に紹介されたのがtrust bodyだった。

「鍼灸を受けると一時は症状が良くなるんですが…先生、この症状は改善しきらないんでしょうか?」
初めてのカウンセリング。

思わず、不安が口をついて出る。

「鍼灸で楽になるということは、筋肉や骨格系から痛みがうまれているということです。
それにしても、全身が同時に痛むのは明らかに不自然なんですよ。もしかすると…心因性疼痛かもしれませんね」

心因性疼痛。

聞き慣れない単語を耳にし、反応に戸惑う。

「普段の生活で頑張りすぎると、交感神経が優位になってあらゆる感覚が過敏になるんです。これは、野生の動物が狩りをしていた時の名残なんですね。つまり…お客様が全身に痛みを感じているのも、交感神経が優位になりすぎているからかもしれません。」

自分は『頑張りすぎている』のか。
正直、あまりピンとこない。

「普段はどういった生活をされているんですか?」

「主人が自営業を営んでおりまして、私はその事務や経理を40年間続けてきました。」

「昔は主人の後輩がよく家に遊びにきていて。よく食事の準備をしていましたね。」

「そうだったんですね。」

そこから、スタッフの登根さんとの会話が続くうちに、自分の状況が整理されてきた。

家に来客が多くて、休める時間がなかったこと。

息子が大学を卒業するまで5時起きでお弁当を作ってきたこと。

「自分がしっかり家庭を支えなくては」という責任感が、昔から長引いていた腰痛をひどくしていたこと。

その腰痛が「いつ改善するのか」という不安感を高め、全身の痛みを引き起こしていたこと。

「症状はきっと良くなります。だから一度、頑張りすぎるのをやめてみませんか」

はじめはピンとこなかった『頑張りすぎ』という言葉が、会話を通じてスッと受け入れられるようになっていた。

そこからは、腰回りを調整する施術がはじまった。通院のたびに、私が自分の過去を受け入れられるようなカウンセリングも行われた。

「光の刺激を極力避けるため、普段の入浴の際は浴室の電気を消してリラックスして入ってください」そんなアドバイスも、きっちり守るようにした。

そして、通院し始めて4回目のこと。
気づけば、明らかに痛みは軽くなっていた。

今までは、原因のわからない痛みを嫌っていた。

ただ、全身の痛みから解放されて気づけたのは、痛みは「メッセージ」だったということ。

『頑張りすぎ』が痛みの原因とわかってから、たまに体が痛んだ時には『少し心を休めないと』と気づけるようになった。

これからも、痛みのなくなった体と、ほどほどに付き合っていきたいと思う。

  • 60代 女性
  • 施術期間:3ヶ月 (12回通院)
  • 担当者:登根 辰徳