起立性調節障害編

家族との関係を見直すと、
学校へ通えるようになった。

「私、お母さんに殺されちゃうかも」

trust bodyでのカウンセリングのとき、思わず口をついて出た一言だった。

頭痛やめまいが止まらず、学校に行けない。

そんな日々の中で、お父さんに連れられたのがtrust bodyだった。

病院でお医者さんに診断されたのは「起立性頻脈症候群」。

私の歳くらいの学生がストレスをためると発症しやすい、
という症状らしい。

「何か、つらいことはある?」

向かい合って座ったスタッフさんは、若い女の人だった。

相場さん、というらしい。

何よりも頭痛が辛かったから、話してみる価値はあるかも、と思った。

「少し前に、お母さんとお父さんが別居したんです。」

「お兄ちゃんはお父さんについて出て行って、私はお母さんが一人になるのが可哀想だからお母さんについていったんですけど…。」

「お母さんはすごくヒステリックで。『あなたはお母さんを一人にしないよね?』って何度も言ってくるんです。本当は私に興味があるわけじゃないのに…。それでも、家事や必要なことはまともにしてくれないんです。」

言葉が止まらなくなる。

「そっか…。今日、こんなになるまでずっと我慢してたんだね。ずっとしんどかったと思うけど、よく頑張ってきたんだね」

「はい…。本当はとても辛かったんです…!」

もうだめだ。

何だかよくわからないまま、気づけばボロボロと泣いてしまっていた。

「大丈夫。ここから良くしていこうね」

カウンセリングのあと、頭や首を緩めながら、浅い呼吸を深くするための施術をされた。

自分の体で起きている症状を説明されたけれど、それは結局「体調が悪くても頑張らなくちゃ」という頑張り屋な性格がそれを引き起こしちゃってるんだよ、ということだった。

そうして、少しずつ症状を改善していったある日のこと。

「お母さんと一緒に生活し続けること、体はもう限界だって伝えてくれているように感じるのだけど。あなた自身はどうしたいと思っている?」
施術中。相場さんからの問いかけだった。

「えっ…。」
突然聞かれて、一瞬戸惑う。

「本当はこんな生活抜け出したいけど…そんなこと本当に言ってもいいのかな?お母さんを見捨てることになるんじゃ…。」
まごうことのない本心だった。

「本当にあなたは優しい子だよね。でも全部自分だけで抱え込まなくていいんだよ。」

「逃げたい。でも、こんなことお母さんに言ったら殺されちゃうかも。」

また、涙が出てくる。

「じゃあ一緒にお父さんに相談してみよう」

今までこんな風に助けてくれた大人は居なかった。整体院で生活まで変わるなんて信じられなかったけれど、頼れる大人の背中は何より大きく見えた。

そうして、父の家へ引っ越してから2年が経ったころ。

症状は良くなって、学校やバイトに行ける「ふつう」の日々を、ようやく過ごせるようになったけれど。
私はまだ体のメンテナンスで定期的に通院していた。

でも、最近は自分に「夢」ができた。
「私、大学に行って薬剤師かリハビリの仕事に就きたいです!」
それが、相場さんに初めて話した夢だった。
「ここに通うようになってから、自分の体と向き合うことが増えて。もっと、自分や周りの人たちの様に辛さを味わっている人の力になりたいな、と思ったんです。」

「痛み」がつれてきてくれた将来の夢。
それを話したとき、相場さんの一番の笑顔を見た気がした。

  • 10代女性
  • 施術期間:6ヶ月 (11回通院)
  • 担当者:相場 圭那